(4)金井壽宏氏

●チェンジ・エージェントと人事のかかわりを考える

  「チェンジ・エージェント」と言っている人の多くは、デビッド・ベイカンはあまり知らないでしょうが、デイビッド・ウルリッチの『MBAの人材戦略』(日 本能率協会マネジメントセンター)を読んのだであれば、「人事部の役割はストラテジック・パートナーとチェンジ・エージェントと効率のエキスパートと従業 員のチャンピオンか、ふんふん」と言っているだけでなく、一つひとつの言葉の持つ意味について深く考えてみてほしいと思います。

 例えば、なぜ「従業員のチャンピオン」と、「チャンピオン」という言葉を使っているのか。辞書を引くと、もちろんボクシングのチャンピオンと同じ意味ですが、最も重要な意味は、「元の声をもっと大きくしてあげる」ということなんです。「主唱する」という意味に近いです。

 ですから、「エンプロイー・チャンピオン」というのは、従業員の声は届いているはずだし、組合もその声を聞き取るために現場にいるんだけれども、それでも聞こえない時には人事部があるおかげで従業員の声がもっとこだまするということなんです。いい言葉ですよね。

  「効率のエキスパート」は冴えませんが、「人事は元々はすべてラインの仕事だった」というデイブ・パッカード(ヒューレット・パッカード創業者)の言葉を 真に受ければ、例えば1000人規模の会社で50人いる部長がそれぞれ人を雇って配属を決めて給与計算をしていたら大変なことです。もしそうだったら、部 長によって給与が違ったり、優秀な人材が部門に囲われて適材適所が実現できない。だから、会社のために人事部ができた。そう考えると、サーバントリーダー 的な発想も必要ですよね。


●エージェントとパートナーの違い

 なぜウルリッチは、その著書の中で、人事部は戦略においては「パートナー」になり、変革については「エージェント」となると表現したのでしょうか。

  戦略の方は、やはりいつもビジネス上の問題で人が絡んでいますし、戦略を真剣に議論するときには、いつもその席に呼ばれる人事部長になってください、とい うことですよね。そこで、日本の人事部長や役員の人に、「呼ばれていますか?」と聞くと、ほとんどの人が「呼ばれている」と言うんですけど、それが単なる 陪席なのか、戦略についても本当に意見を求められているのか。

 絵をつくるときには参加していないけど、「こいつ、どうなってる?」という時だけ聞かれるようであれば、それは本当のパートナーとは言えません。ビジネスを対等に議論できる人がパートナーですから。

 ですから、チェンジ・エージェントという言葉を聞いたことのある人も、チェンジ・エージェントの意味について、もう一度考えてみたらよいのではないでしょうか。


                                  (次号へつづく)


横浜商科大学
特定非営利活動法人 キャリア・コンサルティング協議会
NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会