(3)金井壽宏氏

チェンジ・エージェントとは何か

【中編】

神戸大学大学院 経営学研究科 教授
 
金井 壽宏 氏

 第2回も、金井壽宏神戸大学大学院教授のインタビューを引き続きお送りします。
 
  チェンジ・エージェントといっても、自らの意志や主体性だけで強引に暴走してリーダーシップを行使するのではなく、みんなのために使命を果たすという視点 が重要だと語る金井先生。組織や仕事の現場におけるチェンジ・エージェントの存在、エージェンティックであることの意味について言及します。


● 主体性によるエージェンティックと

 「みんなのために」のコミューナルのバランス

  わたしがいつもデイビット・ベイカンの著書『The duality of human existence』から引用する強烈な言葉は、エージェンティック、あるいは主体性(agency)だけでは「神の代理であったひとがやがて自ら神であ るかのように不遜な発想や行動にとりつかれ、やがては自己破壊をもたらす。がん細胞のように」というところです。

 エージェンティックで誰に突き動かされているのかわからないドロドロとしたもののままだったら、暴走してしまうかもしれません。自分のことだけを考えるよりも、みんなのためになる方が良いんだと思えれば、エージェンティックとコミューナルが良いあんばいになる。

 ですから、チェンジ・エージェントの役割を人事部が担うのであれば、いかなる意味でエージェントなのかということを、「変化」という言葉以上に重んじる方が、良い仕事ができそうな気がします。
 
  エージェンティックとコミューナルについては今まで『働くみんなのモティベーション論』(NTT出版)など2、3回、本やエッセーで書いてきましたが、 「ここが一番印象に残った」という人もいれば、全く心に残らない人というもいます。精神分析学者のフロイトが「幸せな・精神的な健康とは何か」とジャーナ リストに聞かれたときに、「働くことと愛すること」と答えたそうです。この場合、働くことがエージェンティックで、愛することがコミューナルに近いといえ ます。

  また、ジャック・ウェルチのような辣腕経営者が、いちばん大事なキーワードは「Accomplish with others」だと言っています。1人で成し遂げるんじゃなくて、みんなで共に成し遂げると言ったら、エージェンティックなものとコミューナルなものがつ ながりますよね。
 
 ゼミをやっていて、こういうのがリーダーシップの第一歩だなとよく思うのは、誰かがやった方が良いのに誰も手を挙げない時に発せられる「じゃあ僕がみんなのためにやりますよ」という一言。この一言には、コミューナルな要素が含まれていると思います。


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