(2)金井壽宏氏

● 「エージェント」と「コミュ二オン」


 精神分析の心理学者であるデビッド・ベイカン(David Bakan、故人)が、名著『The duality of human existence』(邦訳なし)の中の「エージェンティック」という概念の説明のところで、ニュートンは誰のエージェントとして『プリンキピア』という 本を書いたかに言及しています。

  わたしたちが住んでいるこの世界の森羅万象を神が造ったものだとしたら、それを神の代わりに読み解く。神様はわざわざ「世の中はこうなっています」とは 言ってくれませんから、ニュートンは神のエージェントとして「あなたが造った世界はすごい」と言って物理学の法則を見つけてきた。それが「エージェン ティック」の最もピュアな姿だというのです。

 しかし、神を信じる人たちは、神を信じるが故に十字軍を遠征させてしまうくらいですから、エージェンティックには怖い側面もあります。そこでベイカンは、ちょっと宗教的ではありますが、「コミュ二オン」というものがあるはずだと言って います。同じものを信じている人同士だったら、出会って、コミューナリーなものを形成するというのです。

 ニュートンの場合も、同じ神のエージェントとして、ライプニッツなど同世代の物理学者たちと文通などによってコミュニティをもっていたはずなんです。エージェントとコミュ二オンはセットだとベイカンは述べています。

 多くの人にとっては、その神にあたるものが、愛する人だったり、社長だったり、お客さんだったりするわけです。もともとは、誰もが誰かのエージェントをやっているんだから、ひとりで取り憑かれたように動いてしまってはダメなんです。

  だから、わたしたちが本気でチェンジ・エージェントになるんだったら、誰のエージェントになって、誰と共にこの世界をよくしたいのか、ということを考える べきです。例えば、なぜ多くの人がジョン・レノンの「イマジン」を好きなのか。ジョン・レノンはやはり何かのためのエージェントとして働いていて、同時に 大勢の人とコミューナルなものを持っていたからかもしれません。

                                  (次号へつづく)


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