(6)源明典子氏


● 変革の担い手は

 裏方仕事の好きな人

 最後に、どんな人が変革の担い手になり得るのかについて述べたいと思います。

  何をおいても大事なのは、自らの思いでやろうとする自発的意思がその人にあることです。人に言われてやる、義務感でやるのではなく、自分自身で意味を考え て、誰かのためではなく自分のやりがいや成長のためにやろうと思うからこそ、意見の衝突や利害の対立も乗り越えることができるのです。

  そして、何のために変革をするのか、それが全体や自分にとってどういう意味を持つのかを考え抜くことができる人。その意味で、チェンジ・エージェントは、 現状のマイナス面のほうにばかり目を向けて正していこうとする問題解決志向型ではなく、自分たちはどうありたいのか、何をめざしていくのか、未来に向けて 夢を描き、自ら人に働きかけて伝えることができるビジョン志向型であることが大切です。

 変革の本質は今ある常識や仕事の中にある価値観を見直すことから始まります。現状の問題解決がゴールではないのです。

 そういう人は、一人で変化を起こすことが困難であることも知っています。現実に実行していくために、縦横の関係づくり、仲間を増やすことをしていきます。

 一人の人間は弱い存在かもしれませんが、目的を共有した仲間が集まれば強い力を発揮できます。失敗したり活動の壁にぶつかったりしたときも、支え合い、将来の夢を語り合える仲間がいれば一緒に乗り越えることができるのです。

 このような信頼を基礎としたネットワークで変革を進めていくためには、人の強さも弱さも、長所も欠点もありのままに受け容れることができる、基本的に人を信頼している人がチェンジ・エージェントとして望ましいといえます。仲間を信じなければ変革は成し遂げられません。

  企業の中にはそんな資質を持つ人が実にたくさんいます。私が見たところ、どの組織でもざっと2~3割の人がそうした素地を持っているように思います。目立 たなくても周りの人のために役に立ちたいと思う人はたくさんいます。しかし組織がその発露を妨げているというのが、今の日本企業の実態ではないでしょう か。

 もっと楽しく働こう、もっと社会をよくしよう―そういう思いで現状を変えるための行動を起こす人が組織の中でどんどん顕在化してくるようになると、日本の国はもっともっと輝けると思うのです。

                                                                               (おわり)

【プロフィール】
げんめい・のりこ
東 京都出身。青山学院大学大学院(社会情報学研究科)博士前期課程修了主に、大手メーカーの研究・開発部門、生産技術部門などのコンサルティングの実績をも つ。メンバーが主体的に考え、新たな課題に挑戦していく創発的なチームを育てるために風土課題と事業課題の両方からアプローチし、イノベ―ティブな組織づ くり、戦略展開とその実行支援、経営サポートなどを幅広く行う。著書:『現場の「知恵」が働くチームイノベーション』(日本経済新聞出版社)、『超トヨタ 式 「絶対不可能」を可能にする経営』(日本経済新聞出版社)


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