(5)中島英幸氏

変革に必要なのは

本音で話し合い、違いを認め合う場づくり

【後編】

日本電気株式会社
コーポレートコミュニケーション部
広報統括マネージャー 


中島 英幸 氏 


  NEC本社に戻って以降、社員数もグループ全体で12万人という巨大組織の中では、変革活動には手を付けられずにいた中島さん。しかし、身近な所から対話 の火を灯し続けることを決意して、部内メンバーを集めたワールド・カフェを実施。この活動がきっかけで、全社のビジョンとバリュー浸透に向けた対話集会へ と道がつながっていきます。インタビューの最後に、変革ファシリテーターとしての社内外の活動と、今後目指している姿をお聞きしました。



● 本音を語ることができれば

  モチベーションは上がる

 5年間の出向期間を終えてNECに戻った中島氏は、NEXSでの経験を基にした『私が会社を変えるんですか?』(日本能率協会マネジメントセンター)を共著で出版。また、「最高の居場所」というコミュニティを立ち上げ、社外の人々と組織変革活動の情報交換を始めた。

 ある時、コミュニティの集まりで、メンバーの一人に「今、中島さんは何をやっているですか」と聞かれた中島氏は、NECに戻ってきてから何もしていないことに気づく。

 「2,800人の会社ではなんとかできたが、2万数千人、グループ全体で12万人もいるNECでは無理だとあきらめていた自分に気づいたんです。人に『やれ、やれ』と呼びかけている自分自身が何もやっていないことが、とても嫌でした」

 そこで、NEXSでの経験を生かし、部内の20人ほどを集めて、ワールド・カフェ・スタイルの対話会をやってみた。

 すると、部内の雰囲気が一変する。始める前は事務局で準備した机と椅子を、ワールド・カフェが終わった後、みんなで黙って片付け始めたのだ。互いに協力し合う雰囲気が自然とできていた。

  やがて、この対話会のことが社内に口コミで広がり、ある時、経営企画部から相談を受ける。NECでは、社長の意向を受けて経営企画部主導で2007年にビ ジョンとバリューの策定に着手していた。ビジョンとバリューの浸透のためには対話が必要だという社長の考えのもと、NECグループの中から浸透のためにメ ンバーを80人募り、毎月1回集まって対話をしていたが、なかなか盛り上がらず困っていた。

 「経営企画部の話を聞いて感じたのは、彼ら自身が本当にやりたいと思ってやっているのかどうかということでした」

 経営企画部が義務感でやっているのであれば、浸透メンバーも義務感でしか動かない。彼らに本音を聞いたところ、『やらなければいけないという気持ちは強いが、やりたい気持ちもあるんだ』という答えだった。

 「それなら、『心の底から会社を変えたいんだ』という気持ちを前面に出していけば、メンバーとの心のふれあいが必ず起こる。意欲も行動も引っ張り出すのではなく、そうしたふれあいから自然に発露する、とアドバイスをしました」

 中島氏に相談した経営企画部は「元気が出た」と感謝したという。

 「本音を口に出せて、聞いてもらえると元気が出るんです」

 この時のことがきっかけで、創立110周年記念日に経営企画部と連携して全社的な対話集会を企画するまでになった。

 NECに戻ってからの中島氏は社外広報を担当しており、社内の対話集会を主催する立場にない。そこで中島氏は、ボランティアで対話集会を企画した。しかし、その立場が逆に良かったという。

 「この対話集会がみんなに説得力を持ったのは、企画した私自身に見返りが何もないからです。人間が本気でやっていることを証明するには、損得のないことがいちばんです。私自身も、自分が心底やりたいからこれをやっていると信じることができました」  

 対話集会の参加者は強制参加だったにも関わらず、集会後に無記名でアンケートをとったところ、実に9割以上が「非常に良かった」と答えた。

 「ほとんどの人が、忙しい中嫌々参加したんですが、それでも、モチベーションを上げることができました。なぜなら、本心を出せたから。心を通わせられるようなツーウェイコミュニケーションができると、モチベーションは上がるんです」


                                                                                                   


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