(1)中島英幸氏

ザ・チェンジ・エージェント<実践編>

  ~人の心に火を点け 現場から組織・社会を変える人たち~

  高い意識と志を持ち、ビジョンの実現を目指して奮闘するリーダーがいる。既存の枠組みに囚われず、組織、仕組み、社会に化学反応を起こし、より良い方向へと変革しながら前進してゆく人たち。彼らをチェンジ・エージェント(変革の促進者)と呼ぶ。
 自在(株)ホームページの特別企画として、毎月一人ずつ、チェンジ・エージェントの活動、想いを取り上げてご紹介していきます。

 変革に必要なのは

本音で話し合い、違いを認め合う場づくり

【前編】 

日本電気株式会社
コーポレートコミュニケーション部 広報統括マネージャー

中島英幸 

 組織や集団の中で、コミュニケーションの有効な手法として注目される「ワールド・カフェ」。これを大企業グループ内の大規模な対話集会で取り入れ、企業変革の手段として活用したのが中島英幸さんです。中島さんの企画をきっかけに、その後も対話集会に参加した人々が、それぞれの部署で自発的に対話活動を進めていき、累計3万人が経験し、対話文化はグループ内にじわじわと広がりを見せています。企業の風土変革を仕掛ける中島さんの活動を追っていきます。(ライター:増田忠英)

 

●「ワールド・カフェ」スタイルの

 全社的な対話集会を企画



 NEC創立110周年記念日に当たる2009年7月17日、東京都港区のNEC本社にグループ企業も含めた200人の社員が集まり、対話集会が開かれた。テーマは、「ビジョンを通してNECグループが目指す姿、実現したいこと」。前年に策定したグループのビジョン(「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルカンパニー」)と、それを実現するためのバリューをグループ内で共有することが狙いだ。

 部署も役職も年齢も異なる4人が1つのテーブルを囲み、15分ごとにメンバー交代を行いながら、リラックスした雰囲気の中で、グループの未来の姿について語り合った。その中には矢野薫社長(現会長)の姿もあった。話し合いの結果が集約されることはない。各自、変革のための行動を一つ決意して、4人の前で宣言をして終了となる。

 対話集会はこの日を皮切りに複数回開催され、延べ約3000人が参加した。グループ全体で12万人もの社員がいるNECグループで、これほど大規模な対話集会が行われたのは初めてのこと。全国紙にも取り上げられるなど話題になった。 

 この対話集会で用いられたのが「ワールド・カフェ」の方法論である。ワールド・カフェとは、カフェのように人々が自由に会話でき、自由に関係性を築ける空間でこそ、相互理解や知恵が生まれる、という考え方に基づいた話し合いの手法である。今でこそ多くの組織で取り入れられるようになってきたが、当時はまだあまり知られていなかった。

 こうした対話の良さに気づき、全社的な対話集会を経営企画部とともに企画、さらに本社で行われた対話集会で自らファシリテーターを務めたのが、NECコーポレートコミュニケーション部広報統括マネージャーの中島英幸氏である。

  「対話集会の目的は、NECグループのビジョンから、自分が本当にわくわくするような未来の情景を1人1人にイメージしてもらい、それをみんなで話し合ってもらうことでした」

 ビジョンを共有する上で大切なことは、どんなNECをつくっていかなければいけないか、ではなく、どういうNECをつくっていきたいか、という一人ひとりの本心を話し合うことである。誰かから聞いた言葉や、こういうところではこういうことを言うものだと教え込まれた言葉を言っても、それは単なる情報の交換にしかならず、創造性や知恵にはつながらない。

 「一人ひとりが主体性をもって、自分の本心を言い合わなければ意味がないのです。だから、脈絡もいらないし、恰好つける必要もないし、正解も優劣もない。コンセンサスをつくる場ではなく、違いを尊重し合う場にしました。これをきっかけに、対話の良さを実感した人が増えたと思います」

 NECグループでは、その後も対話集会に参加した人々が、それぞれの部署で自発的に対話活動を進めていき、現在は1万人以上が全社横断的な対話を経験。各部門内での対話含めれば既に累計3万人が経験し、対話文化はじわじわと広がりを見せている。

                                                                                


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