(4)鈴木中人氏


● 娘から託された

 いのちのバトンを渡す 

 「娘から託されたいのちのメッセージを、私が他の人にバトンタッチすること」。やるべきことを悟った鈴木氏は、仕事のかたわら、休日にボランティアで「いのちの授業」を始める。

  「いのちの授業では、死んでいった娘と私たち家族の姿をありのままに語り、生き抜くこと、支え合うこと、ありがとうの気持ちを持つことの大切さを伝えま す。講演させていただくと、皆さん涙を流してくれたり、『娘さんえらかったね』と言ってくださる。子どもを亡くした親の思いとして、子どものことをいつま でも覚えていてくれると、すごく救われるんです」

 娘のことを語ることで、一人一人が、自分も一生懸命生きなければいけないとか、家族の大切さをわかってくれる。それは、娘の死が無駄ではなく、娘の命が活かされているということであり、自分自身も救われ、癒される。

 「ですから、仕事と並行でもしんどいということは全くありませんでした」

 当初は仕事と並行して取り組んでいたが、2004年、母親が脳梗塞で倒れ、介護施設を見て回ったことをきっかけに、会社を辞めていのちの授業に専念することを決意する。

  「私は自分の子どもを亡くし、小児がんの支援活動で年間10人くらいの子どもが死んでいく姿を見てきましたが、自分が死ぬのはまだ当分先のことだと思っていました。ところが、介護施設を訪問すると、自分と同じくらいの年齢の人が介護を受ける姿を目の当たりにし、自分もいつ動けなくなるかわからないというこ とを実感しました。そして、自分が本当にやりたいことがあるなら、それに生きることは意味があると思えたのです」

 「馬鹿なことはやめろ」「“いのち”で飯が食えるか?」

 さまざまな葛藤があったものの、自分が納得する生き方を求めた鈴木氏は、2005年に会社を早期退職し、NPO法人「いのちをバトンタッチする会」を設立した。46歳の時だ。

 「普通のサラリーマンだった私が、娘の死によって生きることの大切さを実感し、次に自分の死を感じることで、自分はこういう生き方をしようと変わったんです」

                                                                                  (つづく)


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