(6)阿部裕志氏

 

● くらし・しごと・かせぎの

 境目のない人生 

 巡の環が提唱・支援するのは、新しい生き方の探究だ。

 「住みたい土地で満足のいく暮らしを続けるためのインフラ作りを、地域の人や島に学びに来てくれた人たちと一緒に構築していきたいと思います」

 阿部氏は最近、「くらし」「しごと」「かせぎ」の3つのバランスをよく考えるようになったという。

  「くらしは、暮らしが手の中にあること、つまり、どれだけ生きる力があるのか、しごとは地域の中でお祭りを手伝ったり、地域の清掃活動をして将来にわたる 地域社会づくりに貢献することです。一般に仕事と稼ぎは別物で、昔の農村社会では「しごと」と「かせぎ」が両方できて初めて一人前と言われていました。ト ヨタ時代の私は稼ぎばかりでした。しかし海士町に移り住んでくらしとしごととかせぎの距離がぐっと縮まり境目がなくなってきました」

 3つのバランスを取ると自分の表裏を作らずいつも自然体でいられ、すべてが心地よくなってくる。もちろんバランスは個人だけでなく企業にも必要だ。

 「時代の半歩先を歩む感覚を大事にしています。のんびりとした田舎企業でもなければ、どんどん飛ばす都会のベンチャーでもない。その間でバランスを取りたい」

 個人の新しい生き方、そして企業の新しいあり方に一石を投じる巡の環と阿部氏をはじめとするメンバーの活動。一石の波紋が日本中に伝われば確実に世の中が変わりそうな気がしてくる。

                                                                                  (阿部氏の回おわり)


【プロフィール】
あべ・ひろし
1978年愛媛県新居浜市生まれ。京都大学大学院(工学研究科)修了後、トヨタ自動車入社。エンジニアとして新車種の立ち上げ業務に携わる。しかし大量生産・大量消費の現代社会に疑問を抱き、入社4年目で退社。
2008年1月、株式会社巡の環を友人と共に設立。大学在学中から自給自足できるようになることを目指し、アウトドアを通して大自然の雄大さ、命のありがたみを学ぶ。海士に来てからは素潜りにハマる。
 

 

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