(3)堺 寛氏

 新たな価値を生み出すために

人と人をつなぐのが自分の役割

【中編】

NTTソフトウェア株式会社人事部 
担当課長 

堺 寛 氏

 
  「情報共有をうまくすることで、チームとして、ひいては会社として、仕事がしやすくなり、成果が出やすくなるのではないか」--グループウェアの構築に携 わる中で、堺さんは知の共有が組織に大きなプラスをもたらすことに気づき始めます。そこで、全社的に知を共有するプラットフォームをつくることを決意しま した。ナレッジマネジメントの実現に向けて堺さんが自発的に行動を起こしたことには、あるきっかけがありました。




● 昇進試験に落ちたことが

   自分を見つめる契機に

 堺氏の情報共有のためのこうした活動は、すべて本業以外のところでやっているいわば“課外活動”である。

 日頃、職場の問題について感じていても、ただでさえ仕事が忙しい中で、行動に移すことは容易ではない。それに対して、堺氏が行動を起こした背景の一つに挙げるのが、主任への昇進試験だ。

 1998年、堺氏は上司の勧めで主任試験を受けたが、落ちてしまう。

 「その時は『受けろ』と言われたから何となく受けた感じでした。主任という一つ上の立場に上がることで、自分が何をすべきか、何をやっていきたいか、というイメージをまったく持っていなかったんですね。落ちて当然だと思いました」

 このことをきっかけに、堺氏は自分のやりたいことは何かを考えるようになる。

  「主任試験に落ちた頃は、『自分の売りって何だろう?』と正直悩んでいました。大学では情報工学を専攻していたので、コンピュータのことはある程度分かる のですが、何か特別に強い技術を持っていたわけでもありませんでした。システムの設計や実装をバリバリやる同期や後輩を見ながら、『こいつらと同じ土俵で 戦っても勝てないな』と思い始めていました」

 そんな時にグループウェアを扱う仕事に関わり、ナレッジマネジメントに面白みと可能性を感じるようになる。

 「私自身、しゃべることはあまり得意じゃないのですが、メールで分かりやすく伝えるとか、共感しながらやりとりをするといったことは得意な方でして、ナレッジマネジメントはそういう特性をうまく生かせると感じたんです」

  翌年、再び試験のチャンスを得た堺氏は、事業部長らへのプレゼンで、「ナレッジマネジメントは組織として今後必要になる。成果もより生まれやすくなるはず だから、自分に専任でやらせてほしい」と訴えた。プレゼンテーションの場では「そんな費用対効果ではだめだ」と受け入れられなかったものの、翌年主任に昇 進したのを機に、半分は今のチームを継続して回しながら、残りの半分で「情報流通基盤企画チーム」として活動することを認められた。

  こうして、部門内での情報共有に取り組み始めた堺氏だが、しばらくすると参加する絶対人数が重要だと考えるようになった。「もっと広い範囲で共有した方 が、困り事を解決するスピードも速くなるし、質の高いアイデアに出会える確率があがる」と。同じような思いを持つ社内の人間同士で連絡をとりあい、本業と は別に会社全体のナレッジマネジメントをテーマにしたミーティングを定期的に行うようになる。

 「2000年の夏頃から検討を始めて話し合いを重ねました。最終的には、参加メンバー内のコンペで僕が出した案が軸となり、全社的なプロジェクトとして企画をとりまとめ、会社に提案しました」

  この提案をきっかけに、堺氏は経営企画部に異動し、知恵DASを核とした全社的な情報共有活動に本格的に取り組むことになる。それぞれの現場には、いろい ろな困り事があり、それを何とかして解決しようと取り組んでいる人たちがいる。本業が忙しいなか、成果が出るところまでこうした活動を進めるのは大変なこ とでもある。

 「ところが、実は別の部署や別のビルで、似たような取り組みをして いる人がいたりするんですよね。ですので、双方を知っている人がうまく仲立ちしてあげると、互いにより良いものができたり、あるいは一緒に取り組むことが できるかもしれない。そういう取り組みを社内で進めていけば、お客様に対してもより高品質なものがより早く提供できるようになると考えました」

 社員にとっても、言われたことをやるのではなく、自分たちで考えたことを形にして外に出していくことができる。

 「それは非常に良いことだし、そういう会社にしていきたい、という思いで取り組みました」

 

 


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