(5)田辺 大氏

日本を活性化させるカギは「多様性」

起業の民主化で社会を変える

【後編】

 有限会社フォレスト

代表 田辺 大 氏 

視覚障害者によるオフィスマッサージ事業を軌道に乗せた田辺氏。ところが一転リーマンショックの逆風が田辺氏を襲います。事業の縮小と再構築を余儀なくされ、再起にかけることとなったフォレスト。社会起業の理想と現実を田辺氏はどう乗り越え、そして今どのような展望を抱いているのか。最後にこれからに向けての新たな誓いをうかがいました。


•挫折と新たな誓い

  逆風の正体は世界を襲ったリーマン・ショックだ。ただし、すぐに影響が現れたわけではなかった。08年の年末も大丈夫、09年の年始も大丈夫だった。

「ああ意外と、こういう福利厚生ものはいったん浸透すると維持されるものなんだなと安心していました」

 ところが年度が変わるや、バタバタと解約される。

「地獄のスパイラルです。営利企業であれば利益が立たなければ、すぐにでもリストラや労働条件の改定で対応できるでしょう。しかし社会の課題を解決するために事業をしているので、おいそれとリストラしていいのか。使命と相反する状況になったのです」

 しばらくは資金調達に走り、埋め合わせていたが、それも限界がある。生き残り策としてメンバーに「非常に厳しい」と話し、給料の固定制から変動制への移行を提案する。だが毎月決まった給料をもらうのに慣れていたメンバーからは「辞めます」「反対します」と言われ、「雇用を減らそうとする自分が追い詰められました」。

 フォレストは徹底的に身の丈を小さくし、再起をかける。そんなとき、生まれつき視覚障害のある遠藤瑞穂さんがフォレストの戸をたたいた。それが大きな転機になった、と田辺氏は振り返る。

「フォレストの厳しい状況を話しました。それでも『新しいチャレンジをしたい』と言われ、社会起業はミッションの響き合う人と一緒に仕事をすべきだと感じたのです」

 遠藤さんにはフォレストが給与の変動制を取り入れたこと、そして障害者の雇用以外の分野も手掛けていくことを納得したうえで、働いてもらうことになった(写真右:遠藤瑞穂さん)。

「ミッションの響き合う人と一緒に仕事をするのは楽しい。創業者は得てしてミッションが違ってもスキルの高い人を雇用したがりますが、結局どこまで行ってもズレが修正できません。09年の経営危機はメンバー同士のミッションの響き合いが弱かったところから生じてきたとも反省しています」

 田辺氏の気づきとともに、フォレストは生まれ変わる。


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