(3)田辺 大氏

日本を活性化させるカギは「多様性」

起業の民主化で社会を変える

【中編】

 有限会社フォレスト

代表 田辺 大 氏 

 NPO支援コンサルタントとして起業を始めた田辺氏。そんな折、妹さんが視覚障害者の男性と結婚したことから、障害者の雇用の場づくりの必要性に目覚めます。持続できる社会事業を目指して、田辺さんはどのように奮闘していったのでしょうか。視覚障害者によるオフィスマッサージ事業開業への道のりを辿ります。

 

•カフェ&マッサージの発想

 フォレストが次のステージを迎えるのは、近親者の「思わぬ行動だった」と田辺氏は振り返る。

「福祉の大学で学んでいた妹が、視覚と聴覚の両方が不自由な盲聾の学生と結婚することになったのです。ボランティアで外出の支援とか、ミーティングの通訳をしていた相手と交際が始まりゴールインすることになりました。家族としては障害の問題よりも、経済面、つまり食べていけるかどうかが心配でした」

 幸いにして義弟は、盲聾者に対するコンピュータ支援というニッチのジャンルで仕事を得ることができた。しかし多くの視覚障害者は社会参加が難しく、なかんずく就労が困難であることを知る。

 視覚障害者を雇用するとなると、その人の移動やコミュニケーションを保障するために、健常者の介助者も一緒に雇う必要がある。人件費は倍だ。民間企業も行政もおいそれと受け入れらない現状が存在する。

「コンサルティングだけでなく、自分でリスクを取って視覚障害者の雇用の場をつくる事業をやらないといけないと思いました」

 田辺氏が、妹さん夫婦の知人である視覚障害者たちに「どんな仕事がしたいのか」と尋ねてみると「意外な」答えが返ってきた。

「盲学校で専門的な技術を習得しているし、国家資格の免許も持っているので、マッサージの仕事をしたいと言うのです」

 04年から障害者との企画ミーティングを重ね、05年春に街中で「カフェ&マッサージ」の店を開こうと決める。カフェの併設は、マッサージだけでは魅力に欠けるので、マッサージの後にゆっくりとお茶をしてもらうのが付加価値になると考えたからだ。

 ところが金融機関からは「前例がない」と融資が下りない。計画はとん挫する。カフェ&マッサージの開店はあきらめざるを得なかったが、もう一つアイデアがあった。

「店舗を開いても必ず暇な時間ができると思っていたので、オフィスの健康対策として訪問マッサージを考えていました」

 田辺氏は社会貢献セミナーなどで知り合った、CSRの意識が高いとされる企業の担当者を訪ねる。しかし新たな予算が発生する企画なので、なかなか色よい返事をもらえない。

 予算はどの部署から出す? 就業時間中になぜマッサージ? 贅沢じゃない? そう言われ、「本当に厳しかった」と当時の逆境を振り返る。


横浜商科大学
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