(6)鈴木崇之氏

●新しいステージに向けて

 バトンタッチ

  鈴木氏が事務局となり、4年半にわたって活動してきた「私がやる!」プロジェクト。一定の求心力を高めた反面、マイナス面も見られるようになった。

  「賛同者が増えた反面、『入りづらい』『一部の人の活動になっている』『鈴木教』『鈴木の出世志向の活動だ』などなど、否定的な意見もたくさんもらいまし た。私自身は自ら始めた人間ですから、最初は感情的になっても次第に自分ごととして受けとめることができます。意識して、そうしたネガティブ情報をイント ラHPにアップしたりもしました。ただ、このプロジェクトで一緒に頑張っている人たちにも冷ややかな視線が向けられてしまうのは辛かったですね」

 そこで、プロジェクトを今後さらに発展させるために、昨年あたりから事務局の役割を後任者に引き継ぐことを真剣に考え始めた。

  「経営に『10年継続する』と言い切ったときから、数年単位で事務局がバトンタッチして継続する構想を持っていました。後任については、これまでプロジェ クトに深くかかわってきた人に引き継ぐのがいいという声もありました。でも、社内で『鈴木がやってるプロジェクト』と見られ続けることの弊害も見えていま したので、何より“鈴木色”を消す必要があると感じたのです」 

 実はもともと「私がやる!」プロジェクトは、トップダウンで降りてくるやらされ感いっぱいの活動に対するアンチテーゼとして提言した経緯があったという。

  「だからこそ、心からやりたい人だけが集まって、社内外の人的ネットワークが少しずつ広がることを大切にしてきたのです。逆に、人事が管轄する活動では、 公平性や透明性も重視して、参加に前向きでない社員も理詰めで動かしていかなければならないことも多いですよね。そういった発想からすると、かなり異端な 存在だったのかも知れません。実際、よく社外の人事の方にも『帝人っぽくない活動だね』とか『人事っぽくないコンセプトですね。ぜんぜん堅苦しくない』な どと言われました(笑)」

 鈴木氏は、立ち上げのステージで現状への対抗軸を打ち出すのは戦略的にも悪くなかった一方、マイナスの側面もあったと振り返る。

  「ただ、会社に定着させるためには、やはりプロジェクトそのものが本流にならなければなりません。そのためには、私自身が事務局をバトンタッチすることが 最も効果的だと考えたんです。紆余曲折ありましたが、今年7月の経営会議で4年半の成果と課題を報告した際には、人財開発部署にバトンタッチした後もこの プロジェクトが継続されることを経営と確認できました。あとは、私がやってきたことにとらわれずに、改良しながら継続していってほしいと考えています」

●組織風土改革をライフワークに


 今年7月から元の職場に戻った鈴木氏だが、現在は、現事務局を陰日向にサポートしながら、引継ぎとして草の根リーダー塾や五感塾に参加したり、全国のメンバーとコミュニケーションを交わすなど、主に 業務外で活動をサポートしている。社外からでも依頼があれば、休日に講演することもあるそうだ。


 そんな鈴木氏だが、この4年半の経験を経て、組織風土改革を自分のテーマに定めたという。

  「会社の中のあらゆる問題の根っこには、組織風土の問題、一人ひとりの社員の意識の問題があります。たとえば、いますごく痛感するのは、お互いに励まし 合ってこそが乗り越えられるものがあるということ。励まし合う組織風土は、信用や情報とも並ぶ企業の重要な『見えない資産』になるでしょう。こうした励ま しひとつとっても、取り組む意義のある大きなテーマだと思います」

 今後は、会社の中で自分にしかできない役割を探して、いろんな切り口で組織風土改革に携わり続けたいと鈴木氏は意欲的だ。そして、こう締めくくった。

 「企業の社員としてやる以上はもっともっとビジネスのリアリティーを身につけて、できれば定年後も続けられる人生のテーマ、つまりライフワークに昇華できればいいですね」 


                                 (鈴木氏の回おわり)


横浜商科大学
特定非営利活動法人 キャリア・コンサルティング協議会
NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会