(4)鈴木崇之氏

●ボトムアップの風土改革に
 必要な「人間力」と「優しさ」

  
 「私がやる!」プロジェクトの特徴は、中堅・若手社員の有志によるボトムアップの活動であることだ。

  したがって、組織や権限を持たない中堅・若手社員が人を巻き込むためには、人間的な魅力、つまり自らの人間力を武器にする必要がある――そう考えた鈴木氏 は、大掛かりな仕組みで組織全体を変えるよりも、人間力の開発に焦点を当て、一人ひとりの意識改革の積み重ねで変化を起こす現実路線をとった。

  なかでも、人間力開発の柱となったのが、08年から始められた「草の根リーダー塾」である。人と情報の研究所代表の北村三郎氏を講師に迎え、1年間を通し て座学4回と五感塾2回を行い、改革の理論や手法だけでなく、志、マナーや思いやり、素直さや謙虚さ、感謝する力といった人間力を磨く。

  特に五感塾は、帝人グループ創業の地である米沢などの地域に赴き、地元の実践家から直に学ぶことを通じて、生き方や生き様から自らを問い直すようなリー ダー育成プログラムである。参加者は五感塾を通じて、現地・現物・現実に五感で触れ、その体験を参加者同士や地域の協力者と共有する中で、気づく力・感じ る力を高め、学び上手になり、人間力が花開いていくという。

 「このプロジェクトに参加することで、皆が内面から変わっていくんです。人間力が開花すると表情が変わってきます。参加当初は硬い表情だったメンバーが、次第に穏やかで柔らかい笑顔を見せていく」と鈴木さん。さらにこう続けた。

  「実は、事務局である私が一番成長したのかも知れません。私を古くから知っている人からは、『オレがオレが』という部分がだんだん少なくなってきたとか、 人の話に耳を傾けるようになってきた、軽かった言葉に重みが出てきたなどと言われます(苦笑)。リーダー業は黒子に徹するほうがいい場面があることにも気 づきましたね」

 そして、もう一つ、「楽しむ」ことがこのプロジェクトのポイントとなっている。

 「講師の北村氏の言葉ですが、『働く×学ぶ×楽しむ』。この3つがミックスされていないと、仕事はおもしろくないし、成長もしにくい。モチベーションが維持できないので、働きがいも実感しづらいと思います」

 実は帝人グループの企業理念や行動指針には『楽しむ』というキーワードがない。

  「サラリーマンはもっともっと『楽』を大切にしたほうがいいと思います。特に「私がやる!」プロジェクトのようなボトムアップの草の根活動では、参加者が 楽しめないことはやらないくらいのスタンスをとっていました。そのほうが、長い目で見て経営が期待するアウトプットも出るんです」

                                  (次号へつづく)


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